保育園で「お子さんに加配が必要です」と言われたら、心配になるのは当然です。
「もしかして、うちの子に何か問題があるのかな?」と不安に思うかもしれませんが、加配が必要とされる基準は明確に定められておらず、加配が必要とされることが必ずしもお子さんに障害があることを意味するわけではありません。
加配が必要とされるのは、集団生活に適応するのが難しい場合です。
加配には「障害」というイメージがあるかもしれませんが、大切なのはお子さんの健やかな成長です。
加配は、お子さんが小学校へ進学する際に、快適な学校生活を送るためのサポートになるのです。
この記事では、保育園で加配を導入する基準について詳しく説明し、加配の利点や他の方法についても紹介します。
保育園での加配導入には明確な基準はない
保育園から「加配を導入したい」と提案されたとき、どのような基準に基づいているのか疑問に思うことでしょう。
加配が必要とされる状況を「障害の有無」と考える人もいるかもしれませんが、実際には保育園が加配を提案する際には、厳格な基準が設けられているわけではありません。
このセクションでは、保育園で加配を導入する基準とはどのようなものかを丁寧に解説していきます。
保育園での加配導入プロセス:その流れと詳細
保護者の方々の中には、お子さんの成長に関する不安から「加配」や「加配の先生」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
加配とは、一体どんな制度なのでしょうか?
<加配の概要>
子どもが集団生活に適応するのが困難な場合に、専門の教員が日々の生活や他の子どもたちとの交流をサポートする制度。
保育園は、子どもの日常的な様子から「この子には加配が必要かもしれない」と感じた際に、保護者と相談し、了解を得た上で必要な書類を作成します。
その後、保育園はこれらの書類を市町村に提出し、加配の申請を行います。
市町村では、提出された書類をもとに加配の適切性を判断し、最終的な許可を下します。
加配の最終決定は市町村が行うものです。
これは市町村が保育士の配置や保育園への補助金の手続きを担うためです。
ただし、加配が必要とされる基準は必ずしも明確ではなく、以下のようなアンケート結果があります。
- 明確な基準がない…約40%
- 障害の程度にかかわらず一律…約30%
- 障害の程度によって基準が異なる…約20%
このように、加配の必要性に関しては、判断が難しい面が存在します。
集団生活のサポートが目的:加配の提案基準
加配の提案は、必ずしも明確な障害の有無に基づくものではなく、子どもが集団生活に上手く適応できていない場合に多く見られます。
例えば、障害者手帳を持つ子どもや、医療的な支援が必要な子どもは加配の対象になります。
一方で、発達障害の「グレーゾーン」にいる子どもたちの判断は複雑です。
発達障害グレーゾーンの子どもたちとは?
- 発達に不安があり、医療機関での診断が下されなかった子どもたち
- 健康診断で発達の遅れが指摘されたが、専門医の受診は勧められていない場合
- 家庭での様子から、発達の遅れが少し気になる程度の子どもたち
これらの状況でも、保育園から加配の話が出ることがあります。
家庭内では見過ごされがちな発達障害の兆候が、集団生活の中で顕著に現れることがあるためです。
集団の中でのやり取りや複雑な環境が、子どもたちの特定の課題を明らかにすることがあります。
そのため、保育園での日々の観察と保育士の経験に基づいて、発達障害グレーゾーンにいる子どもたちに対しても、適切なサポートや加配の必要性が検討されることがあります。
発達障害に関する基本的な理解
発達障害とは、脳の成長過程における障害の一つで、個人の見方や行動の様式に特有の特徴が現れ、日々の生活において適応することが難しい状態を指します。
以下に、主な発達障害の種類とそれぞれの特徴について説明します。
自閉症スペクトラム障害
人とのコミュニケーション(言葉のやり取り・目の合わせ方・表情や身振りなど)が苦手で、感情の表現や他人の感情を察することが困難。
また、以下の特徴も見られます。
- 特定のテーマへの強い関心
- 強いこだわり
- 感覚の過敏性(触覚、味覚など)
注意欠如/多動性障害
年齢に比して落ち着きがなく、集中力が続かない様子を学校や家庭で見せることが多い。
成人すると、以下の特徴がより明らかになることがあります。
- 物事の計画性が低い
- 落ち着きがない
- 注意が散漫
- 感情調節の困難さ
チック障害
意識していないにも関わらず、急な身体の動きや発声が起こること。
例えば、以下のような症状が多いと言われています。
- 頻繁なまばたき
- 顔のひきつけ
- 咳払いや舌打ち
トゥレット障害
チック障害が1年以上続き、日常生活に支障をきたす状態。
典型的な行動は以下の通りです。
- 急に跳ね上がる
- 体の一部を強く叩く
- しゃがむ動作
- 腹部に力を入れる
- 同じ言葉の繰り返しや言葉のつっかえ
吃音
言葉の繰り返しや伸ばし、スムーズに話し始めることができない状態を示す。
学習障害
知能に問題はないものの、読み書きや計算といった特定の学習分野で困難を経験すること。
運動協調障害
全身運動や微細な手の動きに著しい苦手意識を持つ。
一般的には「不器用」と表現されることが多い。
発達障害は、多様な症状が重なり合って現れることがあるため、診断や対応が複雑で難しい状況が多く見られます。
これらの症状が比較的軽度の場合、医療機関でのはっきりとした診断が出されないこともあり、見過ごされがちです。
加配が必要な判断について
保育園での加配の必要性の判断は市町村が行いますが、市町村は保育園での子どもの日常の様子を直接観察することはなく、提出された書類のみで評価を行います。
そのため、保育園が子どもに加配が必要と判断しても、市町村の承認が得られなければ加配の提供はされません。
具体的な診断書などの証拠が不足している場合には、加配の申請が通りにくい傾向にあります。
実際、加配の申請が承認されない事例は少なくないという口コミ情報もあります。
保育園での実情と市町村による判断の間には、しばしば乖離が見られます。
これにより、「加配が必要なレベル」については、以下のような特徴があります。
- 加配が必要とされる具体的な基準はなく、多くの場合、保育園が子どもの状態を観察して判断する
- 保育園と市町村の間で、加配の必要性に関する認識に相違が存在する
保護者にとっては「加配が必要なレベル」とは、子どもが集団生活をスムーズに送るためのサポートが有益であると理解することが望ましいです。
保育園からの加配提案、前向きに受け止めてみては?
公立の保育園では約半数、民間の保育園では約5分の1の割合で、保護者の要望がなければ加配の申請がされないというデータがあります。
保育園が加配を提案する背景には、お子さんの状況を適切に理解し、それに応じた対策を講じたいという思いがあります。
このような提案を、単に不安から拒否するのは考え直してみる価値があるかもしれません。
このセクションでは、加配の積極的な検討がなぜ有益かについてご説明します。
加配の先生による包括的なサポート
加配の先生は、お子さんにどのようなサポートを提供するのでしょうか?
加配の先生の役割と業務
お子さんの状況に応じてカスタマイズされたカリキュラムを作成し、個別にサポートしたり、他の子どもたちとの社交を促進したりします。
まず、加配の先生はお子さんの発達段階や特性を考慮し、目指すべき目標や目的を設定します。
それに基づいて、適した保育方法を策定し、実際にお子さんが在籍するクラスで保育を行います。
お子さんとの直接的な関わりだけでなく、時には間接的に観察し、適切な距離を保つことも大切です。
また、他の子どもたちにも、お子さんの特性を理解してもらい、適切な接し方を教えることもあります。
加配の先生は、さまざまなアプローチを用いて保育を行い、お子さんが集団生活で直面する課題の解決を助けます。
加配の先生には特定の資格が必要とされるわけではありませんが、障害や発達に関する知識や経験を持つ者が多く、安心してお子さんを預けることができます。
加配の先生が対応する場面(例)
加配の先生がいる場合、お子さんが直面する様々な困難なシーンで適切なサポートが受けられ、「できない」ことを「できる」ように変化させることが可能です。
以下では、加配の先生がどのような支援を提供するかを紹介します。
<①集団活動での参加に苦労する時>
特に発達障害を持つお子さんにとって、「みんなと同じタイミングで行動する」ことは難しいことがあります。
加配の先生は以下のようにサポートします:
- 参加が難しい時は、一緒に遊ぶ、参加を促すなどして支援する
- 先生と一緒に活動に加わることで、参加しやすい環境を作る
- 発表会や運動会などの特別なイベントでは、目立たないように別の場所で待機させるなどの配慮をする
また、ルールを守るのが苦手なお子さんに対しても積極的な支援を行います。
- 順番待ちや物の貸し借りの際のコミュニケーション、けんかを防ぐための見守りなどを行う
加配の先生は、お子さんが集団活動やルールの遵守に関する能力を身につけるためのサポートを提供します。
<②気持ちの切り替えに苦労する時>
自分のペースが乱された時に困るお子さんもいます。
- 泣いている子には励ましを送り、落ち着くまで一緒にいる
- 活動への無理な参加を強いらず、子どもが落ち着くまで待つ
加配の先生は、子どものペースに合わせたサポートを心掛けます。
<③言葉の遅れがコミュニケーションに影響する時>
言葉の遅れが原因で、指示の理解や会話が難しいお子さんもいます。
- 指示が理解しにくい場合は、簡潔に説明し、わかりやすいサポートを提供する
- 複数の指示がある時は、一つずつ分けて説明する
- お子さんと友達の会話に介入し、理解しやすい言葉で説明する
加配の先生は、子どもの言葉の理解度に合わせて、コミュニケーションのサポートを行います。
<④基本的な生活スキルの習得が遅れている時>
日常生活のスキルが身についていないお子さんもいます。
- 着替えや食事、トイレなど日常生活の基本スキルの補助を行う
- お絵描きやはさみの使い方など、できないことを一緒に学ぶ
加配の先生は、専門的な知識と子どもの発達に合わせた指導で、生活スキルの習得をサポートします。
このような個別の注意とケアにより、お子さんは日常生活の基本技能を徐々に身につけていきます。
そして、加配の先生は他の子どもたちと比較せず、お子さん一人ひとりのペースに合わせたサポートを提供するため、お子さんは安心して新しいことに挑戦できる環境が整います。
加配の受け入れがもたらす追加の利点
加配を受け入れる事によって、子どもや親にとって様々な利点があります。
保育園通いが子どもにとっての喜びに
加配の先生との良好な関係や友達との円滑な交流が、お子さんにとって保育園へ行くことを楽しい経験に変えます。
子どもが「保育園に行きたい」と言うのは、保護者にとっても心強い瞬間です。
追加費用なしでの利用の可能性
加配の先生によるサポートがあっても、保護者が追加の保育料を支払う必要はありません。
無料で提供されるこのサポートを活用することは、お子さんの発達にとって大きなメリットがあります。
小学校への円滑な適応
細かなサポートによって集団生活に必要なスキルを身につけた子どもは、小学校への進学時に一般クラスでの生活に適応しやすくなります。
小学校教員への詳細な情報提供
加配の先生はお子さんの特性や保育園での様子を詳細にまとめ、それを小学校に引き継ぎます。
これにより、小学校の先生もお子さんを理解しやすくなり、信頼関係の構築や学校生活の適応がスムーズに進むようになります。
「発達障害グレーゾーン」に位置する子どもたちが加配を受けられないケースもありますが、適切なサポートは子どもの成長に大きな影響を与えます。
保育園での適切な対応を受けなかった子どもは、小学校に入学してからも適切な支援を受けにくくなりがちです。
特別支援学級への配置がなく、通常のクラスに適応するのが難しい場合もあるため、保育園での加配の利用は強く推奨されます。
加配の提案があった際には、障害の有無にとらわれず、その利点を考慮して利用を検討してみてはいかがでしょうか。
保育園における加配の注意点と代替支援方法
今まで加配の肯定的な側面を説明してきましたが、全ての子どもにとって加配が最適とは限りません。
加配に関連する懸念点を知ることで、お子さんに合わない場合の迅速な対処が可能になります。
また、加配以外にも子どもの成長を助ける方法があります。本章では、加配の懸念点と他の成長促進のアプローチについてご紹介します。
加配の問題点:先生との関係性
前章では加配のメリットに焦点を当てましたが、デメリットの側面も存在します。
その主な点は以下になります。
- 加配の先生との相性が合わないケース
先生は人間ですので、必ずしも全ての子どもと良好な関係を築けるとは限りません。
相性の問題が生じると、先生の指導が子どもに適切に伝わらない可能性があり、効果的なサポートが難しくなります。
加配を受ける際の考慮事項
加配の先生を受け入れる際には、以下の点を考慮する必要があります。
- 通常、加配の先生は最低1年間は変更が難しい
- 先生との相性問題により、保育園の転園や退園が困難な場合がある
- 加配の先生が必ずしも1対1でサポートを提供するわけではない
市町村の支援を受けている保育園では、加配の先生の変更や園の変更に制約があることがあります。
また、園によっては加配の受け入れに際し、「転園や退園をしない」という合意を求められることもあるので、加配を受ける前に十分な確認が必要です。
加配の申請時には、サポートの形態について園に具体的な確認をすることが望ましいです。
市町村や他の子どもの状況によって、一人の先生が複数の子どもをサポートすることもあります。
現在の保育園での加配がお子さんに適していないと感じた場合、加配以外のサポート方法を探ることも一つの選択です。
加配に代わる支援の選択肢
加配のサポートがお子さんに合わないと感じた際には、以下のような代替案を考えることができます。
- 市町村への相談や自己調査を通じて、転園の可能性を探る
- 児童発達支援施設の活用を検討する
転園が実現可能であれば、市町村に相談して近隣の加配サービスが利用できる保育園を調べると良いでしょう。
児童発達支援は、保育園と併用して利用可能な施設です。
次に、児童発達支援について詳しく説明します。
<児童発達支援とは>
障害のある子どもが日常生活や集団生活に適応するため、基本的なスキルや知識を習得するための訓練を行う施設
児童発達支援の対象は、主に就学前の子どもで、2種類の施設が提供されています。
施設名称 | 特徴 |
---|---|
児童発達支援センター | 子どもや親だけでなく、保育園や医療機関・地方自治体の専門機関とも連携を取って支援してくれる。 |
児童発達支援事業所 | 住んでいる地域で発達支援を受けることができる。(通いやすいように、多くの施設が存在する) |
サービス内容
- 子どもの困りごとに対して気づき、サポートを受けられるよう助言を提供
- 言葉の使用、コミュニケーション能力、社会性の向上、日常動作のトレーニング、就学に向けた準備、親子の関わり方などの指導
- 送迎・給食・おやつの提供などのサービスが提供されることも
- スタッフは専門の資格や知識を持っている
利用方法と費用
- 月に定められた日数で通所
- 子どもの特性に合わせて子どもだけ、または親子での通所が可能
- 朝からの通所、保育園後の通所、特定のプログラムのみの通所など、様々な選択肢
- 市町村から発行される受給者証を用いて、利用料の自己負担は1割
- 所得に応じた負担上限が設定され、回数が増えても上限以上の負担は発生しない
所得別の負担上限額
- 生活保護受給者・市町村民非課税世帯:0円
- 市町村民課税世帯(年間収入890万円以下の世帯):4,600円
- 上記以外(年間収入890万円以上の世帯):37,200円
なお、おやつや教材費など、別途費用がかかる場合もあります。
<児童発達支援施設の利用を考える際のステップ>
- 市町村の福祉相談窓口や障害児支援センターに相談して情報を収集する。
- 申請に必要な書類を事前に確認し、準備する。
- 施設を直接訪問して見学を行う。
- すべての必要書類を揃えて申請書を提出する。
- 市町村の福祉部門に障害児通所給付の申請書と施設が作成した利用計画案を提出。
- 審査が通過すれば、市町村から受給者証が交付されるので、それを受け取る。
- 受給者証を持参して施設に行き、サービスの利用を開始する。
保護者として、どの選択がお子さんの成長に最も適しているかを冷静に判断しましょう。
保育園で加配をつけるレベル・基準や選択肢:まとめ
本記事では、保育園での加配の必要性、その利点と欠点、さらに加配以外の支援手段について説明しました。
- 保育園での加配基準は明確ではなく、理解するのが難しいこともある。
- 加配を受け入れる際は、「集団生活における追加のサポートが有益」と考えるとよい。
- 加配の先生は、子どもの日常生活における困りごとに対して適切なサポートを提供する。
- 加配の先生によるサポートで、子どもが保育園に行くことを楽しむなどのメリットがある。
- しかし、先生との相性など、加配にはデメリットも存在する。
- 加配が合わない場合には、児童発達支援などの他のサポート方法も検討する価値がある。
「加配をつける」と言われて不安を感じるかもしれませんが、親として子どもの成長のために何が最善かを判断することが大切です。
この情報が、加配についての疑問や懸念を和らげ、お子さんの成長の助けになれば幸いです。